リオ・オリンピック

リオデジャネイロ オリンピックが終了してから今頃感想を書くところが非常識で話題に乗り遅れております。
金メダル12、銀メダル8、銅メダル21ということで、各競技の方々はご苦労様でした。

陸上競技の方は室伏が引退した現在、あまりメダルの狙えるような競技は無かったのですが、その中、男子400mリレーの銀、男子50㎞競歩の銅獲得という素晴らしい結果がありました。特に男子400mリレーでは100mで全員準決勝までで敗退した、9秒台の選手ゼロの中、なんと、アメリカに競り勝ち、37秒60という記録をたたき出したところなど、マスコミの感動ストーリーのオンパレードでした。

しかし、本ブログでは全く誰も注目していないであろう、陸上フィールド競技について記載します。
日本選手も男子走高跳、三段跳、棒高跳、やり投げ、十種競技、女子走幅跳、やり投げと選手を派遣しておりますが入賞は棒高跳澤野の7位入賞のみのため、日本のネット上では『金の無駄遣い』『こんなの派遣するな』等、心無い誹謗中傷コメントにさらされてしまいました。実際派遣された選手が突破した参加標準記録は本番でマークすると決勝進出できるレベルの高い記録なので、そんな簡単に達成できるものではありません。
また、フィールド競技の場合、トップ選手といえども、学校を卒業してしまうと、雇用してくれたりスポンサーになってくれたりする企業はスズキや富士通など一部の企業を除くとほとんどありません。かつて陸上部でフィールド競技も力を入れていたモンテローザも不況のため陸上部廃部となる惨状です。
この状況の中、フィールド競技出場された皆様には厳しい環境の中、努力されたことを称えたいと思います。

この後は本ブログで重点的に取り上げていた男子走高跳について書いて行きます。
競技前の予想としては、カタールのバーシム(ベスト2m43)、ウクライナのボンダレンコ(ベスト2m42)のツートップと自己ベスト2m40のカナダのドルーイン辺りが普通に考えると強く、続いてアメリカのキナードの優勝争いになるだろうと思いました。しかし32歳のバハマのトーマスが今季2m37の自己ベストをマークしており、記録的には優勝争いに入ってもおかしくないのでしょうが、正直安定感がないので、難しいだろうという予想です。
中国の張国偉がベスト2m38で、今季も2m33を含め安定して2m30以上を跳んでいるのでダークホースかな、といった感じがしておりました。
日本からは以前に記事にもした衛藤昂選手が登場しました。日本選手権で見事2m29の参加標準を1位で突破し、オリンピック初出場を決めました。日本選手の中では一番安定感のある選手で、筑波大大学院修了後、故郷にあるAGF鈴鹿に就職されています。
最初の高さ2m17は良い感じでクリアします。しかし次の2m22で3回失敗してしまい、初めてのオリンピックは予選落ちで終了となってしまいました。世界のトップクラス選手が集まるオリンピックで、周りが軽々超えていく雰囲気などに呑まれてしまったのかもしれませんが、将来的にダイヤモンドリーグに出られるような活躍を期待しております。

リオ・オリンピックの予選通過記録は2m31に設定されておりましたが、2m29の段階で全員試技終了し、15人が決勝進出を決めました。走高跳の場合、通過記録設定があっても、大抵もう少し低いところで12人以上拾える辺りで談合が行われるようです。バーシム、ボンダレンコ、ドルーインは当然のようにノーミスで決勝進出し、大体めぼしいところも予想通り決勝進出を決めましたが、張国偉が予選落ちしたのは意外です。
トーマスも2m17のジャンプはかつてのデビュー当時話題になった空中三段跳び風フォームでしたが、2m22以降はちゃんとした標準的フォームになっていたのでやや残念です(というか、そりゃずっと練習してるんだからフォームもいくら何でも洗練されてきますよね)。

決勝はドルーイン、バーシムがノーミスで2m33までクリアしていきます。ボンダレンコもいつもの通り、2m25の後、2m29パスで2m33も1回でクリアします。他にボンダレンコと同じウクライナのプロチェンコ(ベスト2m40)、イギリスのグラバーズ(ベスト2m37)が続きます。ジャンプ的にはグラバーズの空中で二段階に切り替わるようなクリアランスが個人的に好きですが、3強に勝つのは何となく難しそうな感じです。プロチェンコも2m33辺りで結構ぎりぎりのクリアで、厳しくなってきました。キナードも何とか3回目でクリアします。
次の2m36をバーシム、ドルーインは1発クリア、プロチェンコ、グラバース、キナードが3回失敗して脱落します。この時点で2m33までノーミスで2m36をパスしているボンダレンコ、バーシム、ドルーインのメダル以上が確定しました。
しかし、いつも思うのですが、ボンダレンコの今季2016年度のベスト2m37なのに2m36をパスして2m38に挑戦するって無茶じゃない?
2m38はドルーインが一発クリアし、バーシムは3回失敗、ボンダレンコは2回失敗して、パス。2m40をボンダレンコが失敗した時点で、ドルーイン金メダル、バーシム銀メダル、ボンダレンコ銅メダルが確定します。
ドルーインも2m40に1度は挑戦しますが失敗し、後は棄権となりました。

リオオリンピック走高跳はほぼ順当な結果となりました。ロンドンの銅メダリストであるドルーインとバーシムがリオではメダルの色を変えて獲得しました。
しかし走高跳決勝進出者の身長で一番低いのがオーストラリアのスターク188㎝で、バーシム190㎝が小柄に見えるという恐ろしい世界です。日本人で世界に戦うには戸邉選手並の身長がないと難しいのでしょうが、高身長の逸材は大抵バスケかバレー、野球に行ってしまうため、この競技でメダルを取るのは相当難しそうです。可能性があるとすれば、ハーフ選手で高身長遺伝子を受け継いでいる人が走高跳を選んでくれるか、野球のエース級で190㎝オーバーの人材をどこかでスカウトしてくるくらいしかなさそうですが、野球の高年俸を捨てて、陸上競技フィールド種目へ苦労してまで来る人がいるとは思えません。この種目で本当にメダルを獲得してほしければ、スポンサーになるなり、競技を見に行くなりして、人気・知名度を上げ、広告宣伝を獲得できるような状況を作り出すことが先決でしょう。