走高跳(ドナルド・トーマス)

走高跳という競技自体がマイナーなためか、海外でも幼少の頃には競技をしておらず、他の跳躍力を必要とする競技や、意外な競技から転向して来た方々が結構います。
その中でもバハマのドナルド・トーマス選手は世界レベルでも有名な選手です。彼は190㎝の長身で、元々バハマのバスケットボール高校代表になるレベルの選手でした。特に跳躍力には自信があり、アメリカの大学にバスケット留学していたとき、陸上競技をしている友人から走高跳をやってみるように促され挑戦してみたところ、2006年には2m23㎝の高さを跳んでしまい、本格的に走高跳を開始して1年半後の2007年大阪世界陸上では、優勝候補筆頭であったステファン・ホルムらを抑え、なんと2m35㎝を跳び、優勝してしまいます。走高跳界では全く無名の存在でしたので、大番狂わせでした。早い助走スピードを生かした理想的なフォームで跳ぶホルムと対照的に、素人から見ると、手足をバタバタしたかのようなフォームで世界一になってしまったため、NHKでもホルムとトーマスを比較した番組が特集されるほどでした。

1年半で2m35をクリアし、この調子行けば、2m45の世界記録も簡単に塗り替えるのではないか、と期待されましたが、世の中そう甘い物ではなく、結局、2015年現在でもベストは2007年の大阪大会でマークした2m35を更新することが出来ておりません。(※2016年に自己ベスト2m37をマークしました)

フォームが素人っぽいと言われるトーマスですが、どちらかというと、助走が無くても、長いアキレス腱から生み出される瞬発力だけで上方へ跳ぶ力を生み出すことができるので、ホルムのような早い助走がないと跳べないスタイルとは異なります。ああやって手足でバランスを取らないと、クリアランスで体を上手くヒネることができないため、彼にとっては合理的な動きだったようです。ですので、言うほどフォームが下手なわけではなく、意味のある動きでした。ただし、起こし回転を利用しない跳び方であるため、彼の瞬発力を鍛えない限り限界が来てしまうことが明らかであったため、ホルムのような跳び方を目指しましたが、故障のため、上手くいきませんでした。
ただし、31歳になった2015年現在でも2m34をクリアしており、世界一流レベルにはあります(というか、日本記録より記録が良い)ので、比較的長い選手寿命を保っております。これは彼がパワーフロップという瞬発力重視の跳び方のため、起こし回転利用の跳び方に比べ、足首へかかる負荷が少ないため、選手寿命を延ばす効果があったのかもしれません。世界的には一流の部類ではありますが、それでも、現在ではバーシム、ボンダレンコといった2m40㎝以上を複数回超えている選手と差があるのは否めません。

それでも、非常にインパクトのある選手で、走高跳界の一世を風靡しておりました。また、バスケットボール界から走高跳へ転向する方が出てくることを期待します。

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